明かされる真実

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その時、五十嵐は一人で資料室にいた。 書類作成の為に使用した過去の資料を片付けている最中、ポケットの中の携帯が震動し始めた。 動きを止め、携帯を取り出す。 登録されていない番号からだった。 「もしもし」 『…………』 「………? もしもし?」 『………あ、あの……』 消え入りそうな女性の声だった。 五十嵐は耳を澄ませる。 『五十嵐さん、ですか?』 「………そうですけど」 『あの、私……。橘、です』 「えっ」 五十嵐は思わず強く携帯を握り締めた。 「………柚子さん?」 『はい』 思いがけない柚子からの電話に五十嵐は激しく動揺した。 あのキス未遂から初めて聞く声で、しかも柚子が五十嵐の携帯に電話をかけてくるのも初めてだった。 『あの、お仕事中…ですよね。お忙しいのにすみません』 「いえ、大丈夫ですよ。今は一人ですから。……それより何かあったんですか?」 『……………』 柚子は躊躇したように黙り込んでいたが、しばらくして遠慮がちな声が聞こえた。 『あの……お仕事終わってからでも、少しお時間作っていただけませんか』 「え。…って、今日、ですか?」 『………はい』 五十嵐は眉を寄せる。 一体、何があったというのだろう。 「別に今すぐでも構いませんよ。証は大学だし、取り急ぎしなくてはいけない仕事もないですから」 『………本当ですか?』 「ええ。……そうだな、あと30分したら迎えに行きますから、柚子さんマンションの下に下りててもらえますか」 『………わかりました』  
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