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「………本当に、そうなんでしょうか」
「………………」
五十嵐の動悸が徐々に激しくなり始めた。
一体、柚子は何を言おうとしているのだろうか。
五十嵐が何も答えないので、柚子は意を決したように口を開いた。
「本当は、15年前の談合事件が関係してるんじゃないんですか」
「───────!」
五十嵐はギクリと体を強張らせた。
柚子はそんな五十嵐をじっと見つめている。
激しく動揺し、五十嵐はそれを隠すように口元を片手で覆った。
「………どこで……それを……」
それだけ呟くと、柚子は悲しそうに顔を歪ませた。
「やっぱり……五十嵐さんもご存知だったんですね……」
「………いや、僕は……」
「当然、証も知ってますよね」
詰問するように言われ、五十嵐は思わず瞳を泳がせた。
柚子は射るように五十嵐の瞳を見据えている。
「僕は……ちゃんと知っている訳ではないんです。15年前といえば僕もまだ子供だったし、知ったのはここ最近の話なんです」
「………………」
「そのことについて証と話したことは一度もありません。……もちろん、柚子さんを三千万で買った真意も僕にはわかりません」
それを聞いた柚子は少し表情を和らげ、わずかに身を引いた。
気が抜けたように目を逸らす。
「そう……ですか」
「はい。ただ……」
五十嵐が言葉を続けたので、柚子は再び顔を上げた。
「証がその事件のことを知っていることは、間違いないです」
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