明かされる真実

31/40

2391人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
五十嵐は窓から少し空を見上げた。 空に雲はかかっていないが、街が明るすぎるせいか星も見えない。 「もう真っ暗ですね。そろそろ帰りましょうか。証も心配してると思いますよ」 「……………はい」 五十嵐は柚子に目を向け、微笑んだ。 「落ち着いて、証と会えそうですか」 「……………」 柚子は黙って頷いた。 五十嵐は体ごと柚子に向き直る。 「今はまだ、多分割り切れないことも沢山あると思います。時間がたてばまた、今とは違う感情が湧いてくることもあるでしょう。……でも、決して一人で悩まないでください」 柚子は驚いて五十嵐の顔を見つめた。 五十嵐の瞳は真剣で、真っ直ぐに柚子を捉えていた。 「忘れないでほしいのは、証も僕も、柚子さんには苦しんでほしくないということです」 「……………」 「おそらく証は、あなたが15年前のことを知って、自分が憎まれることよりも……あなたがそのことで苦しむことのほうが辛いと思うんです。 だから……思い悩んだ時は、すぐに頼ってください。 証に話しにくいことなら、僕がいつでも力になりますから」 五十嵐が話し終わる前に、再び柚子の目がうるうると涙で潤み始めた。 「…………五十嵐さん………」 「あー、ほら。もう泣かないで」 慌てた五十嵐はハンカチを取り出し、柚子の涙を拭いた。 柚子はハンカチを受け取り、それで目元を強く押さえた。  
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2391人が本棚に入れています
本棚に追加