明かされる真実

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「始めはさ、憎まれてもいいって思ってたんだ。 どうせ10ヶ月しか一緒にいねーんだし、自分のしたいようにしてやろうって。 ………でも、その子との生活が思った以上に楽しくて。 時間が経つにつれて、その子がすげー大切だって思うようになって…… それと同時に、事件のことを知られて、その子に憎まれるかもしれないって…そう思うと無性に怖くなった。 矛盾……してるよな」 証は柚子の顔を見つめ、今まで柚子に見せたことのないような苦しげな表情を浮かべた。 「俺が……憎いか」 柚子は黙って証の顔を見つめる。 証は少し笑ってみせた。 「もう……俺と一緒にいたくねーか」 「……………」 「2月まで一緒にいるなんて……耐えらんねーか」 その時、柚子は証に向かって駆け出していた。 そうして証の首に腕を回し、その体に強くしがみついていた。 証は一瞬驚いたようだったが、直後柚子の背中に腕を回した。 愛しげに柚子の髪に顔を埋める。 「エゴだってわかってるけど……俺はまだ、お前と一緒にいたい」 「…………証………」 「でも、お前が出て行くって言うんなら……俺は止めない」 柚子は驚いて体を離し、証の顔を間近で見つめた。 目が合い、証は少し笑う。 「止める権利なんか、俺にはねぇから」 「……………証」 柚子の頬をとめどなく涙が流れ落ちるのを見て、証は両手でそれを拭った。 そのまま優しく頬を包み込み、柚子の顔を引き寄せてコツンと額同士を合わせた。 「…………ごめんな。………橘」   証の手が柚子の髪を優しく梳ずる。 こんな弱々しい証は初めてで、柚子はどうしていいかわからなくなった。 「らしく……ないよ、証。証はもっと偉そうで、俺様なのが合ってるよ」 そう言うと、証は少し笑った。 その笑顔までが、なんだか泣き出しそうに脆く見えた。 柚子は涙を拭って身を起こした。 「証、前に言ったじゃない。実質、私からの契約解消はできないって」 「………………」 「残りのお金、払う当てないもん。……ちゃんと、契約が終わるまで、私はここにいる」 証は驚いたように瞠目した。 信じられないというように柚子を見つめる。 「………そんなの、無効も同然だろ。お前はずっと、ただ俺のエゴに付き合わされてただけなんだぞ」 「────いいの!」 柚子は証の胸元をギュッと握り、少し勝ち気な笑みを見せた。  
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