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「そういえばお梅さん。身の周りの物で不自由はありませんか?こんな男所帯ですから、何かと不便でしょう」
華乃はふと思い出したように、お梅にそう尋ねた。
「……あ…いえ…ありません…。ありがとうございます…」
歯切れの悪い返事をした後、ちらりと服に視線を落とすお梅。そんな彼女を察した華乃は、お梅の手を握って微笑む。
「あ、そうだ。一緒に着物を買いに行きましょう」
「え?ですがっ…わたしは…その…」
お梅は言い辛そうに言葉を濁した。それもその筈。単身でやって来た彼女は無一文だった。
「ああ、お金の心配はいりませんよ。必要な分だけ私が稼いでみせますから」
例え冗談のように聞こえても、冗談で済まさないところが華乃だ。
「ほらほら、早く行きましょう」
「え、あ、ちょっ、小倉さん…っ、待っ…!」
そうして華乃は、未だ戸惑うお梅の手を引いて町へと繰り出した。
「行ったか?」
「ええ、そうみたいですね」
パタンと、部屋の入り口の襖を閉め、沖田は土方の前で足を崩す。
「フ…、どう遠ざけてやろうかと悩んでいたが、あのお梅って女のお陰で手間が省けたぜ」
「あはは、私達の言うことは一切聞きませんからねぇ、華乃さんは」
「まったくだ」
華乃がいては安心して話が出来ないと、二人は彼女の留守を狙っていたのだ。
そして、ようやく外出したのを確認できた。
土方は改めて厳しい顔を作ると、誰にも聞かれないよう小さな声で話し出す。
「…じゃあ…手筈通り、まず、新見を殺るぞ…」
先日、会津侯から下された極秘の暗殺命令。
それは、新撰組に汚名を着せる芹沢派の一掃だった。
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