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「……まずいですね…」
ポツリとそう呟いた斎藤に、土方は怪訝な表情をする。
「あ?何がだ?」
「…小倉もいないんです」
「ああ、アイツならお梅って女と一緒に町へ出てったぞ」
「それがまずいんです」
「はあ?」
だから何が『まずい』というのだ。
一向に彼の意図が分からず、頭に疑問符を浮かべる土方。すると斎藤は、ようやく理由を切り出した。
「新見殿は…小倉の命を狙ってるんですよ」
ガタタン!
その瞬間、勢いよく席を立った沖田に、二人は面食らう。
「総司!?総司!待て…!」
土方が呼び止めるのも虚しく、彼は脱兎の如く部屋から飛び出していった。
「あ~くそっ、行っちまいやがった」
投げやりな様子で毒を吐く土方。
「申し訳ありません。軽率でした。まさか…沖田君があのような出方をとるとは…」
思っていなかったと、斎藤は申し訳なさそうに土方に詫びた。
「いや…君のせいじゃない。総司は時々、読めねぇ行動を取ることがあるからな…。それより、小倉が狙われてるってのはどういうことだ?」
「新見殿は、小倉を疎ましく思われてる様子。これまでも何度か小倉に、彼が接近しようとしているのも確認してます」
「……そう…か…芹沢…」
芹沢を改心させる小倉の存在が、新見には目障りだということか。
「ちっ、馬鹿が…。新見ごときが、あの小倉に敵うわけねぇだろ…」
なんせ、小倉は総司と対等にやりあえる腕だ。
「ええ、だからまずいんです」
「は?」
「小倉は…世間体を気にしませんゆえ…」
向かってくる敵には容赦しない。
それが例え、相手が上司であっても、だ。
「なるほど…確かにまずいな…」
新見には死んでもらう予定でいるが、それはあくまで暗殺。今、小倉に殺させる訳にはいかない。
「小倉が新見を斬ったとなれば、俺はアイツを裁かなきゃならねぇ」
「そう。ですから今まで自分は、二人を会わせないよう気を付けていたのですが、今回は油断しました…」
悔しそうに言った後、次いで斎藤は入り口に目をやる。
「ですが、沖田君が行かれたんなら心配ないでしょう」
すると土方は、ヒクリと顔を引きつらせた。
「ああ…斎藤くん…そのことだが…」
「はい?」
「…小倉が仲間にも容赦ねぇってやつ……」
実は…
「総司も…そうなんだ…」
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