7946人が本棚に入れています
本棚に追加
/202ページ
華乃が再び懐刀を構えた時、お梅の小さな悲鳴が聞こえた。
「オイ!この女を殺されたくなきゃ、今すぐ新見先生を離せ!」
「!?」
振り向いた先で見た光景は、男二人に身体を拘束されるお梅の姿。
「…くそっ…仲間が…!」
完璧に想定外だった。
華乃は舌打ちしながら新見から距離を置く。
「は…ははっ!あははは!」
新見は狂ったように笑うと、落ちていた刀を拾って華乃に向けた。
「これで、貴様もその女も終わりだな」
「…なぜ、そうまで私達を目の敵にするんです?」
「とぼけるな!貴様らのせいで芹沢は腑抜けになってしまったんだ!絶対に許さんっ」
「…だから貴方は腰巾着だっていうんです」
「なにぃい!」
「ひとつ忠告しましょう。お梅さんに傷一つでも負わせてみなさい、貴方達に…この世の地獄を見せてあげますよ」
「…っ」
新見は一瞬怯むものの、気を取り直して刀を構えた。
「今から死にゆく奴が何を偉そうに!死ね!!」
向かってくる新見に、華乃は地を強く踏みつけ反撃に備える。
しかし、新見の刃が届くことはなかった。
信じられないと目を見開く新見。そのまま前に倒れた彼の後ろにいたのは、
「総司…さん?」
地面に横たわる新見は、背中から刀で心臓を貫かれたようで、確認した時には既に事切れていた。
沖田は血糊を払い除け華乃の横を通りすぎると、お梅を捕らえる男達に近づいていった。
「沖田!貴様ぁぁあ!自分が何をしたのか分かってるのか!?このことが知れたら貴様、ただでは済まんぞ!?」
後ずさりながらも気丈に怒鳴る男に、沖田はくすりと笑うと容赦なく刀を振るった。
ザシュ…
斬られた男の首がお梅の足元に転がり、彼女は初めて体験する惨劇に気を失ってしまった。
「ええ、分かってますよ。でもそれは…貴方達を黙らせればいいだけのことです」
絶命した男にそう語りかけた後、沖田の剣はすかさず、逃げようとしたもう一人の男を捕らえる。
「ひ!助け…ぅわぁぁああ!!」
命乞いも聞き入れて貰えず、残りの一人も呆気なく斬り伏せられた。
生臭い血臭があたりを覆う。
「そう…じ…さん?…っ総司さん!!」
華乃は慌てて沖田に駆け寄った。
彼はあろうことか、なんとお梅にも刃を向けたのだ。
沖田の前に回り込んだ華乃は、気絶したお梅を庇うように腕の中に抱いた。
最初のコメントを投稿しよう!