第十四章:私は私らしく、華乃の決死の思い

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「退いてください、華乃さん」 沖田は怒った風もなく、普段通りの態度で話し掛けてきた。 「何…を…しようとしてるんです?」 「ああ、だって見られちゃいましたから。その人にも。だから殺さなきゃなりません」 ケロリと言ってのけた沖田を、華乃は目を細め鋭く睨み付ける。 「…総司さん………私を……怒らせたいんですか…?」 すると沖田は、え?っと本気で戸惑ったようだ。慌てて首を左右に振った。 「な、なんでそうなるんですか!?華乃さんは何を怒ってるんです?何か怒らせるようなことしました?そうなら謝りますからっ」 あわあわと弁解する沖田の様子は、今しがた剣を振るっていた彼とは似ても似つかない。 沖田からしてみれば、華乃を助ける為に新見を殺し、殺しを見られたから証人を消す。それだけの気持ちだったのだ。 「…お梅さんも斬ろうとしましたよね…?」 「あ、はい。いけませんでした?」 「当たり前でしょう!彼女は私の友人なんですよ!?」 華乃が怒鳴ると、沖田は心底驚いた顔をした。 「え?そうなんですか?てっきり芹沢先生の恋人かと…」 華乃は柳眉を吊り上げる。 「貴方は…!芹沢局長の恋人と分かってて斬ろうとしたんですか!?」 「…や、だって…支障はないかなって…」 その芹沢も、今晩でいなくなるのだから。 この時の沖田は、予想外の華乃の怒りに混乱していた。ゆえに、思わず口走ってしまったのだ。 「彼女だって一人残されるよりは…」 と。そして、それを聞き漏らす華乃ではなく。沖田があっと口を押さえた時には、彼女が彼の胸ぐらを掴みあげていた。 「今……なんて言いました…?」 「…っ」 非常事態だというのに、華乃に顔を近づけられた沖田は動揺する。 おかげで、頭が上手く働かなくなっていた。 「…さっき、迷わず新見局長を斬られた時も思ったんですよ。なぜ幹部の貴方が、局長より私を選ぶのかって…」 それは純粋に華乃の方が大事だった為だったが、彼女は違う意味で捉えたらしい。 「もしかして…芹沢局長も…お払い箱にしようとしてるんじゃありませんか?」 「!?」 彼女の勘の鋭さは、相変わらず舌を巻く。 本当はここで否定するべきだった。 だが、思考能力が低下していた沖田は言い訳の言葉が思い浮かばず、これ以上の華乃からの言及を避ける為、慌ててその場から立ち去った。
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