第十四章:私は私らしく、華乃の決死の思い

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沖田が去った後、華乃は足の力が抜けペタリと座り込んだ。 隣で横たわるお梅に手を伸ばし、たまらず彼女を抱き締める。 一緒、だ。 今のお梅は、昔の自分と酷似していた。 己に力が足りない為、大切な人が死のうとしている。 「…っ」 華乃は悔しげに唇を噛み締めた。 (結局は…) 新撰組も幕府と同じ、自分達に都合が悪い者は排除する。そういうことだ。 腕の中のお梅の顔を覗く。 (お梅さん…) 彼女は幸せを見つけたばかりだ。 こんな形で終わっていい筈がない。 そう強く思った華乃は、お梅を抱きかかえると、ある場所へと向かった。 『彼』の潜伏先を知っているのは、桂さんと自分のみだ。 目的地に辿り着いた華乃は、戸に向かって小さく呼び掛ける。 「高杉さん…」 すると、中から戸が勢いよく開かれた。 「華乃!?どうしてここに!?」 「……詳しい話は中で。とりあえず…お邪魔してもいいですか?」 「あ、ああ…、入れよ」 初めは驚いていた高杉だったが、華乃の様子がおかしいことに気づき、心配そうに眉を寄せながら中へ招き入れた。 「突然お邪魔してすみませんね。お梅さんを休ませる場所が、他に思い付かなかったもので」 新見暗殺を目撃したお梅は、必ずしも安全といえない立場にいる。だから、このまま屯所に戻るのは気がひけたのだ。 「別に俺は構わねぇけど…。しっかし…新撰組がねぇ…」 一通りの事情を聞いた高杉は、困ったように頭を掻いた。 「…組織ってのは犠牲を払って成り上がってく…、それは華乃、お前も知ってるだろう?」 「………分かってます」 松陰先生が殺された時、嫌というほど理解したつもりだ。 「どうだ?これで懲りただろ?お前にあんな場所は似合わねぇよ」 だから戻ってこいと、高杉は言う。しかし、華乃は首を横に振った。 「私には…まだやらなきゃならないことがあります」 「…さっきの女か?やめとけ、深入りするとオメェが辛くなるだけだぜ?」 「けど…っ」 「芹沢は死ぬ。いくらお前が頑張ったところで、これは変わらない」 「っ…やってみなきゃ分かりませんっ」 「ハ!何人もの強豪を相手にか?…華乃、もう諦めろ。何もお前が命を賭けることはない…」 高杉がそう吐いた瞬間、お梅が寝ている筈の部屋の襖が、ゆっくりと開かれた。
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