第十四章:私は私らしく、華乃の決死の思い

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よろよろしながら現れた女性に、高杉と華乃は「しまった」という顔をする。 今の会話をすべて、お梅に聞かれていたらしい。 「今の…芹沢さんが…死ぬ、って……ほんと…なんですか?」 「……お梅さん…」 「嘘……ですよね?ね、小倉さん…っ」 「………」 華乃の無言の意味を察したお梅は、泣きそうに歪んだ顔で華乃の胸にすがってきた。 「いや…っ!そんなの嫌…!!せっかく…せっかく居場所を見つけたのにぃぃぃい!!」 己の胸で泣く彼女の背を、華乃は包むように抱いた。 「お梅…さん…」 「助けてください!芹沢さんを…っ」 華乃の瞳が揺らぐ。 「後生ですから…っ…あの人を死なせないで…っ」 そう頼むお梅に、華乃が口を開こうとした時、 「いい加減にしろよ、この馬鹿女」 不機嫌そうな高杉の声が響いた。 ビクッと身体を強張らせるお梅。そんな彼女に、高杉は責めるような口調で言った。 「アンタさぁ…、華乃のことを超人かなんかと勘違いしてね?コイツだって斬られりゃ痛ぇし、最悪死んじまうこともある」 「高杉さん…!」 華乃が憤然して怒鳴っても、高杉は気にした風もなくお梅に続ける。 「芹沢さえ助かりゃいいのかよ?華乃が危ない目にあっても?あいにくと俺は、芹沢なんて知ったこっちゃねぇからな。コイツを危険に晒すなんて俺が許さねぇ」 「っ…わ、わたし…そんなつもり…じゃ…」 苛立つ高杉から鋭い目付きで睨まれ、とうとうお梅はポロポロと涙をこぼした。 「高杉さん…」 華乃の声音に凄みが増す。 「…いくら貴方でも…それ以上言ったら…許しませんよ…」 彼女から昇る凄まじい怒気に、高杉はバツが悪そうに顔をしかめた。 そして華乃は、次にお梅に視線を移すと、瞳を和らげて話しかける。 「大丈夫ですよ、お梅さん。芹沢局長は…私が守ってあげます」 「…っ…けど!そしたら小倉さんが危険に…っ、わたし…そこまで考えてなくて…ごめ…ごめんなさい…っ」 「大丈夫ですって。私は大丈夫ですから。もう安心してください…ね?」 優しく微笑みかけながら宥めると、お梅は緊張の糸が切れたのか、再び華乃の腕の中で眠りについた。
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