第十四章:私は私らしく、華乃の決死の思い

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すやすやと眠るお梅を別室に寝かせた後、華乃は高杉に詰め寄った。 「高杉さんっ、どうしてあんな酷いこと言ったんです!?弱い人が強い人に助けを求めるのは当たり前でしょうっ」 「そんなの知るかよ。だいたいお前こそ、出来もしねぇ約束するんじゃねーよ」 鋭く睨みをきかせる華乃に、高杉も負けじと文句を言う。 「…さっきから出来ない出来ないと…いい加減腹立ちますね。出来ないんじゃなくてやるんですよっ」 「開き直んな馬鹿野郎。だからお前は、まだ餓鬼だってんだ。自分の力量ぐらい把握しろ」 「なんですってぇ!?なら今、私とやり合いますか!?」 「図星さされたからって、俺に八つ当たりすんじゃねぇ」 バチバチと、二人の間には火花が飛んだ。 そうしてしばらく経った時、突然華乃が不気味に笑いだした。 「ふ…ふふ…、いけませんねぇ…。目的を見失うところでした…」 華乃の怪しげな様子に、高杉は虚を突かれ口を閉ざす。 「ここに来たのは、彼女を休ませる為以外にも、もう一つ、貴方にお願いがあったんですよ」 「…なんだ?」 「以前、預かってもらった『夕顔』、あれを受け取りにきました」 シンッと静まり返った部屋の中、最初にその静寂を破ったのは高杉だった。 「夕顔って…お前…本気で?」 「ええ、当たり前です。あの刀を使うまでもないと思ってましたが、今回の相手は分が悪すぎますからね」 こっちも本気でかからなければと、華乃は強い意思を込めて言い切る。 すると高杉は「ちょっと待ってろ」といい、数分後にはある細長い包み手にして現れた。 「ほらよ」 「ありがとうございます」 華乃は礼を言ってその包みを受けとると、丁寧な手付きで中身を取り出す。 そこから姿を見せたのは、紅い鞘に紅い柄、そして紅い鍔でこしらえられた、美しい深紅の刀だった。 華乃の愛刀『夕顔(ゆうがお)』は、刃を殺傷能力ぎりぎりまで薄く削いであり、その軽さゆえに女の身でも自由自在に操ることができる。いわゆる彼女の為に仕立てられた、彼女専用の刀なのだ。 「久しぶりだね…夕顔…」 華乃はまるで、人間と接するかのように、己の愛刀に微笑みかけた。 「まさか、お前がそれを持ち出すなんて…な」 「………だから言ったでしょう。本気だって」 感慨げに呟いた高杉に、華乃は「信じてなかったのですか?」と、やや呆れたようにぼやく。
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