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すやすやと眠るお梅を別室に寝かせた後、華乃は高杉に詰め寄った。
「高杉さんっ、どうしてあんな酷いこと言ったんです!?弱い人が強い人に助けを求めるのは当たり前でしょうっ」
「そんなの知るかよ。だいたいお前こそ、出来もしねぇ約束するんじゃねーよ」
鋭く睨みをきかせる華乃に、高杉も負けじと文句を言う。
「…さっきから出来ない出来ないと…いい加減腹立ちますね。出来ないんじゃなくてやるんですよっ」
「開き直んな馬鹿野郎。だからお前は、まだ餓鬼だってんだ。自分の力量ぐらい把握しろ」
「なんですってぇ!?なら今、私とやり合いますか!?」
「図星さされたからって、俺に八つ当たりすんじゃねぇ」
バチバチと、二人の間には火花が飛んだ。
そうしてしばらく経った時、突然華乃が不気味に笑いだした。
「ふ…ふふ…、いけませんねぇ…。目的を見失うところでした…」
華乃の怪しげな様子に、高杉は虚を突かれ口を閉ざす。
「ここに来たのは、彼女を休ませる為以外にも、もう一つ、貴方にお願いがあったんですよ」
「…なんだ?」
「以前、預かってもらった『夕顔』、あれを受け取りにきました」
シンッと静まり返った部屋の中、最初にその静寂を破ったのは高杉だった。
「夕顔って…お前…本気で?」
「ええ、当たり前です。あの刀を使うまでもないと思ってましたが、今回の相手は分が悪すぎますからね」
こっちも本気でかからなければと、華乃は強い意思を込めて言い切る。
すると高杉は「ちょっと待ってろ」といい、数分後にはある細長い包み手にして現れた。
「ほらよ」
「ありがとうございます」
華乃は礼を言ってその包みを受けとると、丁寧な手付きで中身を取り出す。
そこから姿を見せたのは、紅い鞘に紅い柄、そして紅い鍔でこしらえられた、美しい深紅の刀だった。
華乃の愛刀『夕顔(ゆうがお)』は、刃を殺傷能力ぎりぎりまで薄く削いであり、その軽さゆえに女の身でも自由自在に操ることができる。いわゆる彼女の為に仕立てられた、彼女専用の刀なのだ。
「久しぶりだね…夕顔…」
華乃はまるで、人間と接するかのように、己の愛刀に微笑みかけた。
「まさか、お前がそれを持ち出すなんて…な」
「………だから言ったでしょう。本気だって」
感慨げに呟いた高杉に、華乃は「信じてなかったのですか?」と、やや呆れたようにぼやく。
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