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「小倉はまだ見つかんねぇのか!?」
夕方、土方の怒号が屯所中に響いた。
「何をあんなに苛立ってるんだ?副長は」
「まーた小倉さんが、何か怒らせることやったんじゃないっスか?」
怪訝そうに首を傾げる永倉に、藤堂は溜め息混じりにそう言った。
「はあ?いつものことじゃねぇか。何を今さら」
「い、いや、確かにそうですけど…そんなキッパリと…」
ヒクっと苦笑いする藤堂。
この騒動の始まりは、数時間前、突然、小倉華乃を見つけ次第捕獲しろという命が下されてからだ。
無論、隊士達には理由は知らされてない。
しかし、隊士が総勢で探索にあたっても未だ見つからず、土方の機嫌は悪くなる一方だった。
「ああ!くそっ!どこ行きやがったんだ!?」
屯所のある一室で、土方が苛立たしげに叫んだ。
「歳、声を少し抑えろ。外に漏れる」
「…すまねぇ。けどよぉ近藤さん、小倉、アイツ絶対ぇ止めに入るぜ?」
「だろうなぁ…」
新見が死んだ。いや殺したと、沖田から報告を受けた二人は焦った。
なんせ、華乃の目の前で斬ったというのだから。
「…絶対に気付いた筈だ。俺達の意図に」
芹沢派一掃の計画を。
「………あのぅ…、やっぱり…私の…せい、ですよね?アハハ…」
居心地悪そうに正座している沖田は、控えめに笑いながら言った。
「あったりめぇだろーが!この馬鹿!なんでよりにもよって小倉の前で斬っちまうんだ!」
「や、あの時は何も考えられなくなって…………ごめんなさい」
「こら歳!言い過ぎだぞ」
シュンとなった沖田に、近藤は優しく微笑みかける。
「総司、お前は悪くない。悪いのは歳だ」
「はぁああ!?なんっで俺!」
「総司を止められなかったお前が悪い。だからすべてお前の責任だ」
「どう考えたって不可抗力だろ!?」
理不尽だとキャンキャン喚く土方を無視し、近藤は山南と向き合った。
「で?どうします?山南さん」
「……新見先生も死に……今さら、後戻りは出来ないでしょう…」
「ですね。じゃあ、やはり最初の手筈通りにいきますかね」
まず、簡単な理由をつけた宴会を開き、そして芹沢を宴会の席で酔い潰させた後、深夜に忍び込んで暗殺する。という手順だ。
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