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「俺は、所詮いい恰好がしたいだけなんだ。
上っ面の自分を作り上げて、人の目ばかり気にしてる。
…だから、親友の嘘にも見抜けなかった。
いや、気づかないふりをしていたのかもしれない。
あいつにとって、ただ『いい奴』でいたいがために。
本当にあいつを思うなら、泣いてすがってでも、ぶん殴ってでも、俺はあいつとちゃんと向かい合うべきだったんだ……」
康祐は、自分だけに病気のことを打ち明けた。
ずっと親友だと思っていたが、感情表現の乏しいあいつが実際どう思っているのかわからなかったから、俺は正直嬉しかった。
おかしいと思うことは何度もあった。
だけど、『詮索するな』とでも言いたげな康祐の眼に、俺はいつも喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
俺に秘密を打ち明けたことを後悔して欲しくなかったから。
康祐に、軽蔑されたくなかった――
いつの間にか、頬に涙が伝うのに気づく。
だが、それを拭うことさえできないほど、俺は打ちひしがれていた。
彼女は、じっと前を見据えたまま、どんな言葉もかけてはこなかったが、不思議と違和感はなかった。
どれくらいそうしていただろうか。
辺りはすっかり薄闇に飲まれ、先程まで河の土手で遊んでいた子供たちの姿も見当たらない。
「私の嘘は、彼を守るためだった。
彼の笑顔と、彼の未来を…
あなたの親友も、何かを守ろうとしたのかもしれない」
突然話し出した彼女の言葉に、俺の心は大きく波打つ。
康祐が何かを守ろうとした――?
少なくとも俺は、最後まであいつと、腹を割って付き合うことはできなかった。
その事実は消えない。
小西から、最後にあいつが送った手紙を見せられて、俺はそう確信した。
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