第1話

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成田空港へ到着後、俺はその足でスクールへ直行した。 「米倉さん、今日帰国予定じゃなかったですか?」 驚く相葉コーチの肩をポンと叩き、俺は教官室のロッカーに飛び込む。 なぜだか、無償に野球がやりたかった。 ロッカーの中にお守りのようにしまってある古いグローブをそっと取り出す。 それは、中学に入学してすぐに新調したもので、高校卒業までを共にした思い出のグローブだ。 恵の結婚式を終え、喪失感と共に湧きあげてきたのは、ひたすら何かに打ち込みたい焦燥感だった。 「もう俺には野球しかないな」 古いグローブを指にはめ、俺は自嘲気味に笑う。 グラウンドに出ると、ちょうと幼児クラスが始まるところだった。 今日は監督不在と通知していながら、俺が顔を出したことに父兄や子供たちは驚いた顔をしている。 それでも、笑顔で駆け寄ってくれる子供たちが嬉しかった。 その中には、驚くべき人物の顔があった。 「航平!」 俺は夢中で彼の肩に手を置き、2カ月ぶりに見るその笑顔に心の底から安堵する。 彼の後ろには祖父の姿があり、何度も頭を下げる姿が印象的だった。 「風邪は治ったのか?」 色の白い彼の顔を覗き込むようにしてそう尋ねると、航平は嬉しそうにコクンと頷く。 「そうか。 じゃあ、これからも一緒に頑張ろうな」
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