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アパートに戻り、冷蔵庫から缶ビールを取り出し一気に飲み干す。
もともと酒は強い方だが、最近はどうも深酔いしがちだ。
同じ頃、転勤で地元に戻った木山と、最近は時間が合えば飲みに行っていた。
プルルルル…
携帯の着信は、その木山からだ。
「結婚式どうだった?」
学生の頃からムードメーカー的存在だった彼は、いくつになってもキャラは変わらない。
学友とはそういうものなのだろうか。
「いい式だったよ。
めぐちゃん、キレイだった」
ドレス姿の恵を思いだしながら、俺は携帯を片手にベッドに倒れ込む。
木山には、恵への気持ちを話してはいない。
恵以外誰にもこの気持ちを口にしていなかった。
主将という立場もあるが、きっとそれだけではない。
「俺も見たかったな。
めぐちゃんが結婚かぁ。
やっぱ、少し淋しいな」
電話の向こうでため息をつく木山に俺は無言で相槌を打った。
「靖司さぁ…
めぐちゃんのこと、好きだっただろう?」
思いがけない彼の発言に、俺はついベッドから跳ね起きてしまった。
「なっ―――ー」
普段ならいくらでも誤魔化せるはずが、あまりに予想外のことに俺は咄嗟の言葉が出て来ない。
「なめるなよ、俺を。
おまえが一途に彼女を思っていたことは、とっくに気付いてたさ。
結婚が決まって、急に昔の女遊びがぶり返したこともな」
開いた口が塞がらなかった。
正直、ただの気のいいお調子者と思っていた木山が、俺のことをそこまで見ていたとは思ってもみなかった。
「おまえが思うより、俺たちは、ちゃんと素のおまえと付き合ってきたんだぜ。
有働だって、めぐちゃんだって…たぶん、康祐も。
靖司、おまえ…
康祐のこと、一人で抱えているんじゃないか?」
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