第1話

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何も言えなかった。 不覚にも、俺は泣いていたのだ。 周りが見えていないのは、他でもない。俺だったのかもしれない。 主将として、チームを引っ張ってきたつもりだった。 だが、そうではなかったのかもしれない。 みんな、俺に引っ張られるフリをしてくれていたのではないか。 「木山…明日飲もうぜ」 そんな申し出に、明るく快諾してくれた木山と電話を終え、俺は再びベッドに身を横たえる。 明日、木山にすべて話してしまおうか。 一瞬そうも考えたが、すぐにその想いは打ち消された。 話せば、あいつも同じように苦しむだけだ。 部員が、俺の嘘をどこまで信じていたのかは知らないが、康祐の態度に不信感を抱いたことは間違いない。 そして、誰もその真実を彼に確かめようとはしなかった。 誰も、康祐を止めることはできなかった。 いや、真実に気づき、止めることができたとすれば、それは俺を置いて他にいない。 ともかく―― 俺たちは… 俺は、彼の心の叫びに耳を貸すことができなかったんだ。 翌日、スクールを終えた俺は、木山との待ち合わせまでまだ時間があったので、再びあの河原に自転車を走らせたが、彼女は姿を見せなかった。 「さえらが、おまえと連絡取りたいって言ってたぜ」 最近すっかり常連となった駅前のバーで飲みながら、木山が思い出したように言う。 「へぇ…」 そう言えば、あそこであいつにも一度会ってたな。 高校時代より、化粧が何層にも厚くなった彼女の顔が一瞬頭をよぎった。 「メルアド教えて。 そのうち連絡してみる」 わざと気だるそうに答えた俺は、横顔で木山の冷やかな視線を痛いほど感じながらも、気づかないふりをする。 「おまえ、いい加減にしろよな。 自棄になっても報われんぞ」
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