第1話

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そんなことはわかってる。 だが、別に自棄になっているわけではない。 後腐れのない相手と、お互いその時間を楽しむだけのことだ。 「女と戯れている時間だけ、余計なことを考えずにすむんだ」 吐き捨てるようにそう言い放った俺に、懐かしい木山の鉄拳が飛ぶ。 「見損なわせるな。 おまえが女にモテたのは、その時その時の女に真剣だったからじゃないのか。 今のおまえは、ただのスケコマシじゃねえかよ」 突き放すようでいながら、木山が誰よりも俺を思ってくれているのはわかっている。 だが今の俺は、どうにも気持ちのやり場を見つけられず、もがいていた。 「もともと大した男じゃねえよ」 まだ大した量も飲んでいないのに、頭にぼんやり靄がかかったように思考回路が麻痺している。 最近は、酒を飲んでもいつもそうだ。 心配そうに俺を見る木山を感じながらも、俺は肩を落としたまま、打ちひしがれたようにただグラスを握りしめていた。 「また、みんなで集まって野球やろうぜ」 そう言って肩に置かれた木山の手の温かさに、情けないほど泣きたくなる自分を感じながら。 翌週の幼児グループのレッスンに、航平の姿はなかった。 先週復帰した時に見せた彼の弾けるような笑顔が忘れられず、俺は悩んだ末に、レッスン後母親に電話を入れてみるが、何度かけても留守電に切り替わる。 肩入れしすぎと言われるかもしれないが、航平が気になって仕方なかった。
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