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そんなことはわかってる。
だが、別に自棄になっているわけではない。
後腐れのない相手と、お互いその時間を楽しむだけのことだ。
「女と戯れている時間だけ、余計なことを考えずにすむんだ」
吐き捨てるようにそう言い放った俺に、懐かしい木山の鉄拳が飛ぶ。
「見損なわせるな。
おまえが女にモテたのは、その時その時の女に真剣だったからじゃないのか。
今のおまえは、ただのスケコマシじゃねえかよ」
突き放すようでいながら、木山が誰よりも俺を思ってくれているのはわかっている。
だが今の俺は、どうにも気持ちのやり場を見つけられず、もがいていた。
「もともと大した男じゃねえよ」
まだ大した量も飲んでいないのに、頭にぼんやり靄がかかったように思考回路が麻痺している。
最近は、酒を飲んでもいつもそうだ。
心配そうに俺を見る木山を感じながらも、俺は肩を落としたまま、打ちひしがれたようにただグラスを握りしめていた。
「また、みんなで集まって野球やろうぜ」
そう言って肩に置かれた木山の手の温かさに、情けないほど泣きたくなる自分を感じながら。
翌週の幼児グループのレッスンに、航平の姿はなかった。
先週復帰した時に見せた彼の弾けるような笑顔が忘れられず、俺は悩んだ末に、レッスン後母親に電話を入れてみるが、何度かけても留守電に切り替わる。
肩入れしすぎと言われるかもしれないが、航平が気になって仕方なかった。
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