第1話

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病院からの帰り道、高台から夕暮れの空を見上げると、高校時代の想い出が走馬灯のように俺の頭を駆け巡った。 練習後、自転車を走らせる俺たちは、吸いこまれそうな夜空と心地よい疲労感で、いつだって気持ちは浮足立っていた。 木山がいた。 恵がいた。 康祐がいた。 思えば、俺を含め、あそこにいた3人全員が恵に思いを寄せいていたのだ。 「フッ…」 その恵だけが、先日、長い長い恋をようやく終焉へと導いてくれた小西と結婚した。 薄々感づいてはいたが、康祐と恵は、高校時代からずっと思い合っていたのだろう。 そのことを、二人が気づいていたのかはわからないが、純情な二人はその気持ちを伝え合う術を知らなかったに違いない。 俺なら、そんな二人を取り持ってやることができたのに… その俺が恵に思いを寄せていたのだから、仕方ない。 俺が、もう少し大人だったら、康祐は生きているうちに恵と結ばれていたかもしれない。 だが、二人には必ず来る別れがあった。 もしかしたら、康祐は恵の気持ちを知りながら、彼女を拒絶したのではないか。 それが、彼女を傷つけない唯一の方法だと信じて… それこそ、あいつが彼女に示すことのできた、たった一つの愛の証しだったのだろう。
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