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五十嵐は否定していたが、やはり証の言うようにずっとこれまでモテてきたに違いない訳で。
おそらく黙っていても女性が寄ってきたのだろう。
(………うわー。私そんな人に告白されたんだ……)
改めて柚子はこの事実が夢ではないのかと、頬をつねりたくなるような衝動にかられた。
「あの……柚子さん?」
「え、あ、はい」
柚子は我に返り、慌ててバッグから携帯を取り出した。
五十嵐の表情が和らぐ。
「いいん、ですか?」
「え、もちろん」
柚子が頷くと、五十嵐は嬉しそうに笑顔を見せた。
「よかった。グラタンも他の料理もすごく旨かったですって、すぐにお礼を言いたかったのに言えなくて。……アドレスさえ知ってればって、今まで何度も思っていたので……」
「…………あっ」
それを聞いた柚子は弾かれたように顔を上げた。
「私も手袋のお礼言いたかったんです。社交辞令でも何でもなくて、手袋欲しいなって丁度思ってたんです」
「………ああ」
五十嵐は再び顔を赤らめた。
「どう……でしたか?」
「すっごい可愛かったです! 真っ白でフワフワで。ホントにありがとうございました」
柚子がペコッと頭を下げると、五十嵐はホッとしたように微笑んだ。
「よかった。……俺も、すごく嬉しかったですよ。柚子さんがわざわざご飯届けてくれて……」
「………いえ」
「そうだ、皿とか返さないといけないですね」
「あ、じゃあこのまま貰いに行きます」
すると五十嵐は静かに首を振った。
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