聖夜に降る雪

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12月24日───。 「ご馳走作って待ってるから、なるべく早く帰ってきてね」 玄関先で鞄を手渡しながら言うと、証は溜息混じりに頷いた。 「…………ああ」 「土曜日だから早めに帰れるんでしょ?」 「…………多分」 「ちゃんと五十嵐さんにも声かけてね」 そこで証はいい加減うんざりしたように柚子を睨みつけた。 「わかったっつってんだろ! ったく昨日から何回同じこと言えば気が済むんだ!」 「……だって楽しみなんだもん」 「ハタチにもなってクリスマスイブぐらいでそんなにはしゃいでんじゃねーよ。恋人同士で祝う訳でもねーのに」 「………いいからとにかく早く帰ってきてね」 しつこい念押しにとうとう証は返事をせずにプイと家を出て行ってしまった。 柚子は腕まくりをしながらキッチンへ向かう。 「さーて、何からしようかなー」 今日はクリスマスイブ───。 ご馳走を作ってシャンパンを片手にケーキを食べて…… こんな風に証と何かをお祝いするのはきっとこれが最後になるだろう。 しかも五十嵐を交えて三人でとなると……。 (五十嵐さんと会うのも久しぶりだし、楽しみだなー) 買い物は昨日のうちに済ませ、準備も万端だ。 ただ一つ残念なのは、家の中を飾り付けようとして証に本気で止められたことだ。 (飾り付けしたら雰囲気出るのになー) それでも柚子は上機嫌で、鼻唄混じりにケーキ作りの準備に取り掛かった。 料理に夢中になっていた柚子は、いつの間にか手元のキッチンだけが煌々と明るいことに気が付いた。 時計を見ると5時少し前。 外は夜の帳が降り始めている。 予報では天気は西から崩れてくるとのことだった。 もしかしたらホワイトクリスマスになるかもしれない。 リビングの電気を点けたと同時にチャイムが鳴らされ、玄関のドアが開く音が聞こえた。 柚子は慌てて玄関へと向かう。 「お帰りなさ……」 そう声をかけた柚子は、玄関にいるのが証一人だったので思わず言葉を止めた。 「………五十嵐さんは?」 「ああ、あいつ来れねーんだと」 そう言うと証は柚子に鞄を手渡した。 「ええー、どうしてぇ?」 「なんかガス屋が来るとか」 「は? ガス屋?」 「ガスがぶっ壊れて昨日は風呂にも入れなかったんだと。で、今日修理に来るらしい。何時になるかわかんねーから、悪いけど今日は遠慮しとくってさ」  
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