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柚子は立ち止まり振り返る。
「送っていきます」
「え、大丈夫です、近いですし」
「駄目です、こんなに暗いのに。ちょっと待っててください」
そう言うと五十嵐は一旦部屋の中へと戻っていった。
しばらくしてコートを羽織った五十嵐が、何やら小さな紙袋を手にして現れた。
「あの、これ……」
五十嵐はためらいがちにその紙袋を柚子に差し出した。
柚子はきょとんと五十嵐を見上げる。
「クリスマスプレゼント…って言うには大袈裟なんですが。昨日、駅で見かけて、柚子さんに似合いそうだと思ったので……」
「…………えっ」
柚子は弾かれたように顔を上げた。
「私にですか!?」
「はい」
予想外のプレゼントに柚子は目を丸くする。
まさか五十嵐からクリスマスプレゼントを貰えるなんて、夢にも思っていなかった。
「い、いいんですか?」
「はい」
「でも私、何も用意してなくて……」
「いいんですよ、そんなの。それこそ俺が勝手に買ったんだから。……柚子さんに似合いそうだと思って衝動的に、つい。……高い物じゃないし、気にしないでください」
五十嵐は柔らかく微笑む。
「それに……こんな風にわざわざ来てくれることが、俺にとっては充分にクリスマスプレゼントですから」
それを聞き柚子は顔を赤らめる。
「お、大袈裟ですよ、五十嵐さん……」
「そうですか?」
五十嵐にとっては本音なので、大袈裟でも何でもない。
現に思いがけず柚子の顔を見られて、今どれだけ嬉しく感じているか。
「開けてみていいですか?」
柚子の言葉に五十嵐はハッと我に返った。
サッと顔を紅潮させる。
「いや、それは恥ずかしいから勘弁してください」
「どうしてですか?」
「若い女の子の趣味に合ってる自信がないので。帰ってから一人で開けて、気に入らなかったら捨ててください」
「そんなことしませんよ」
真っ赤になって言う五十嵐を少しカワイイと思いながら、柚子は有り難く紙袋を受け取った。
「ありがとうございます。すごく嬉しいです」
にっこりと笑顔を見せると、五十嵐ははにかんだように俯いた。
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