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そう。クラスメイトたちが進路に夢中な中、不良であるオレたちはいまだ進路が未定。だからなのか、こいつとは馬が合う。こいつと一緒に居ると飽きないし、なんだかんだで楽しいんだ。
「……なぁ、谷原」
「んんー?」
どこか遠くに感じるクラスメイトたちをぼーっと眺めながら、何気なくオレは口を開いた。
「オレたちも、何か"きっかけ"があれば……変われるのかな」
「……はぁ? どしたの急に?」
谷原が、「こいつ大丈夫か?」みたいな目でオレを見る。
「……いや、悪い。何でもねぇ。ただの独り言だ」
「ふーん……」
そう、今のはただの独り言。ホント、何で急にあんなこと言ったんだかオレは……。
「……まっ、こんな連中放っといて、ボクたちはボクたちで楽しもうよ。お互い不良同士さっ」
谷原はニカッ、と白い歯を覗かせながら、楽天的な笑顔を浮かべる。周りなんか関係ないと、心底思っているみたいに。
「いや、いい。お前は一人で楽しんでろ。オレも一人で楽しむから」
「って、ちょっと! 置き去りですか!? 次の授業サボるならボクも行くって!」
今日もオレは谷原をぞんざいに扱う。これがいつものオレたちの在り方。
オレは昼休みが終わる直前に席を立ち、そのまま教室を出る。もちろん、次の授業をサボるためだ。
「…………」
が、オレは気づかなかった。オレたちが教室を出るところをじっと見つめる、一人のクラスメイトの視線に。
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