そんな毎日

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―――――――――――――― 「では、HRは以上です。みなさん、気をつけて帰ってください」 放課後。眼鏡をかけた三十半ばの細身男性担任、篠山が今日も人の良さそうな笑顔でホームルームを終わらせる。 「いよっしゃー! やっと終わったぁー! ゲーセン行こうぜ矢崎ぃっ!」 すると、真っ先に谷原がハイテンションになりながら勢いよく立ち上がる。コイツ、放課後はいつもこうだな。 あと、やっと終わったって言うけど、お前学校来たのついさっきだからな。 「はぁ、またかよ。オレそろそろバイト代ピンチだからパス」 「えぇ~、なんだよツレないな~。しょうがない、ならボク一人で行ってくるよ。それじゃっ!」 断ると、案外素直に諦め、谷原はウキウキした足取りでひとり教室を出ようとする──のだが。 「あ、あのっ……!」 そこに、一人のクラスメイトがどこかおどおどした様子で谷原の前に立ちはだかる。 「ん? ああ、"橘妹"じゃん。なんか用?」 オレたちに声をかけてきたのは、とある一人の女生徒。眉をハの字にして、いかにも気が弱そう顔をしている。 しかも、そっちから話しかけてきたにも関わらず、どうしようどうしようと一人あわあわ混乱してるし。谷原はそんな彼女を『橘妹』と呼ぶが……。 「え、えっと、あの……」 「んん~? だから何~? 早く言ってよ」 「えっと、その……きょ、今日二人とも、そ、掃除当番……です……」 すぐに用件を言おうとしない女子に谷原はあからさまにイラついた声で急かすと、彼女はどこか泣きそうな顔になりながらオレたちに掃除当番だと告げる。か細い声で。 「掃除当番~? ハッ、やるわけないじゃんそんなの。めんどくさい。"委員長"に任せるよ。それじゃあね~」 が、谷原はフン、と鼻で笑い、当番を拒否し教室を出て行こうとする。 「ひぅ、そ、そんなぁ……」 すると、その女子はさらに泣きそうな顔をするが──。 「こぉぉらぁぁぁッ!! 妹を泣かすなこのバカ秀平ーーー!!!」 「ぐはぁぁーーーッ!!! ど、ドロップキック……」 そこに、怒声をあげながら別の女子がオレたちのところにやって来た。──いや、正確には"飛んで来た"だな、うん。 その女子は走りながら、キレのいいドロップキックを谷原の顔面にかましたのだ。
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