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ってか谷原の顔、キレイに靴の形にへこんでるぞオイ……こいつホントに人間か?
「う、ぅぅっ……」
谷原はまるでカエルのように手足を投げ出し床に倒れ伏している。
「動かない……まるで屍のようだ」
「生きてるよっ!! 人を勝手に殺すなぁ!!」
「おぉ、生きてたか。それより谷原、この二人は?(チッ、なんだ生きてたのか……)」
「っておいぃぃっ!! 心の声ちょっとぉ!! 普通に聞こえてるからそれ!!」
あぁもう、いちいちうるさいヤツだなぁホント。それよりも、目の前のこの泣きそうな女子と、ツンとしてる恐そうな女子について説明してくれ。
「ってか矢崎、何言ってるのさ? 委員長──橘妹は二年間ボクたちと同じクラスだし、その姉の"由香"(ゆか)だって、一年前からの知り合いで──」
「ぐっ、うぁぁ! しまった谷原! オレまた記憶喪失になっちまったかもしれない……ぐぉぉ!」
「なっ、だ、大丈夫か矢崎!? 治る方法は!?」
オレのボケを再び真に受け、真面目モードになる谷原。
「あ、ある……お前がオレに、購買の焼きそばパンを買ってきてくれれば……」
「焼きそばパンだな!? わかった! ボクが必ず焼きそばパンを買ってきてお前の記憶を──って、焼きそばパンで記憶喪失が治るかぁぁぁッ!!」
チッ、素直に騙されて買ってくればいいものの。
「はぁ。アホなコントしてないで、アンタたちはさっさと教室の掃除しなさいよ。妹に迷惑かけたらアタシが許さないわよ?」
すると、バカを見るような冷ややかな目でオレたちを見てくるツンとした女子。
「妹妹って、お前ホント妹離れしないヤツだよな。シスコンにも程があるぞ」
「う、うっさいわね! 秀平みたくアンタも床とキスしたいの!?」
「わかったわかった、そう怒るな。──で、お前誰なの?」
「喧嘩売ってんのアンタッ!?」
しまった、また怒らせてしまった。
「ねぇ矢崎、今日は一体どうしたのさ? 記憶喪失ばっかなって」
「なってねーよ。信じんなアホ。ほら、いいからさっさとこの二人を紹介しやがれ」
「??? まぁいいけど……」
オレはやれやれとため息をつく。まったく、なんでオレは登場人物の説明のためにいちいち記憶喪失ごっこなんかしなきゃならねーんだ……何かの主人公かオレは。
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