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「──はぁ、疲れたぁ……委員長~、これでいい~?」
「は、はい。これでおしまいです」
「やっと終ったぁ~……なんかボク由香に蹴られまくって痛いから、先に帰るね……お疲れぇ」
時刻は夕方四時。オレと谷原は久しぶりに残って教室を掃除したが、なんと橘妹が当番じゃないにも関わらず手伝ってくれた。
外はすっかり夕焼け空で、谷原はカバンを引っ掴むとしんどそうに教室を出ていく。
「サンキュー橘、おかげで助かった。それじゃな」
「い、いえ。……あの、矢崎くん!」
「ん?」
掃除が終ったのでオレも帰ろうとすると、橘妹はどこか勇気を出すようにしてオレを呼び止める。
「あ、あの……差し出がましい事だとはわかっていますが、も、もう三年ですし、そ、そろそろ遅刻とか授業とか、真面目に考えた方が……」
そう言われた瞬間、頭に若干血が上る。
「……関係あんの?」
「へっ?」
「お前に関係あんの? オレが遅刻したり、授業サボったりするのが」
「えっ? そ、それはっ、そのぉ……」
しまった。ちょっとキツめに言ったせいで橘妹が泣きそうだ。
でも、今のは多分図星を突かれたから。だから少しキツイ言い方になっちまった。
オレだってもちろんわかっている。こんな時期にロクに進路も考えず、ダラダラと毎日を過ごすのはいけないって。
けど、周りみたくオレは、先を考えられない。将来やりたい事とか、夢なんて……何もないから。
「え、えっと……か、関係ありますっ!」
すると、泣き出しそうだった橘妹が、めずらしく声を張る。
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