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「わ、私は、このクラスの委員長……ですから。だから、その……や、矢崎君の事も……!」
少し驚いた。こいつのこういうところ、初めて見るから。
オレは橘妹とは二年から同じクラスだが、こいつと話すのは大抵姉の由香を通してだ。二人きりでこんな風に話す機会なんてそんなに多くはない。
だから、素直に驚いている。こいつがこんな風に食い下がってくる姿を見るだなんて。ホント、驚きだ。
「……でも、委員長って言ったって、半ば無理矢理決まったようなもんだろ? 二年の時もしてたからって」
「あぅ……そ、それは……。で、でもっ! 委員長は委員長なので、だから……ち、遅刻とかはもう──」
なんと、まだ食い下がってくるか。まったく、困ったヤツだなぁ。
「はぁ……悪い、オレ不良だから」
「ふぇ……?」
やけに食いついてくるので、オレは目の前の橘妹の頭にポンと優しく手を乗せ、"不良"を言い訳にして教室を出る。
そう、オレは不良なんだ。今さら真面目クンになんかなれるかっての。
「まぁ考えておく。じゃ、気をつけて帰れよ」
「ぁ……は、はぃ……」
オレの行動にかなりびっくりしたのか、橘妹は目をまん丸にしてその場で固まり、真っ赤な顔でオレを見送る。
こいつの言うことはもっともだが……今さら直そうとは思わない。今さら足掻いたところで、全てがもう手遅れなのだから──。
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