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目当ての物を買い、「ありがとうございましたー」と男性店員の声を背に受けながらコンビニを出る。
オレの朝食は、いつもコンビニのおにぎりかパンだ。今日は好物のカレーパンを買い、通学路を歩きながら一人モソモソとそれを食う。
もちろん人の目なんか気にしない。ってか、"この時間は"人なんてほとんどいないからな。
──学校まであと少し。ここからは二車線の道路と、ガードレールが設置された幅にゆとりのある綺麗な歩道がややカーブを描き、緩やかな坂道となって続く。
そしてこの歩道には、桜の木が一本一本等間隔で植えられており、家から学校までの二十分間、退屈な道のりもこの歩道だけは三年間通っても飽きが来ない。
しかし、今は五月。ゴールデンウィークも終わり、桜の見頃は満開時と比べると盛観さに欠けてしまうものの、まだちらほらと桜色の景色が楽しめる。
そして、学校まであと少しのこの歩道だが、普段は自分と同じ制服を着た学生でにぎわうのだが、現在時刻は朝の9時半。つまり、オレは"遅刻組"。
「やっぱこの時間が静かで落ち着くなぁ。遅刻最高だぜ」
五月のうららかな気候を満喫しながら、遅刻してるにも関わらずオレは目を閉じ清々しい笑みで、この状況を心から堪能する。
食っていたカレーパンもすっかり胃袋の中。あとはひたすらのんびり学校を目指すだけだ。
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