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もう何日目の雨だろう。ずっと降り続いている。
雨の日は頭が痛くなるし、酸素も薄い気がするし、髪の毛は爆発するし。
最悪だ。
机に突っ伏して頭を抱え、ただひたすら、シトシト止みそうにない雨の降る様子を眺めていた。
「よっ」
突然、背後から声を掛けられて、驚きに瞬きを数回繰り返す。
声の持ち主を、私は知ってる。
「えっ!?」
勢い良く体を起こして振り向くと、そこにはニコニコ笑って佇む一平が居た。
「…アンタ、何でこんなとこに居んの?」
恐る恐る問い掛ける。
だって、一平が此処に居るのはおかしかった。
「あれ?見て分かんない?バスケでしょ、バスケ。合同練習よ、今日」
「あ…」
言われてまじまじもう一度、上から下まで一平の姿を見る。
確かに、よく見慣れた練習着だ。
「ちゃんと男子の練習予定も把握しとけよな」
「あ、うん…って別に、あたしに関係無いし、男子の練習予定」
「何だと?…じゃあ、カレシの練習予定くらい、把握しとけよ」
そう言って、ニシシといたずらな笑顔を見せる。
思わずつられて、私も笑ってしまった。
「よく、ここに居るって分かったね」
ほころぶ顔を隠すように、辺りを見回す。
がらんとした、静かで暗いだけの図書室。
「だってお前、好きじゃん、図書室。分かるでしょ、そりゃ」
心の底からアタリマエという顔で一平が言うから、それがどうしようもなく嬉しくて、胸がギュッとする。
「んじゃ俺、戻るわ」
「えっ、もう?」
思わず口をついた言葉に、行きかけていた一平が足を止め、ニンマリ振り返った。
「なに。寂しいの」
「え」
困って言葉に詰まると、今度は優しく、一平は笑って。
「またすぐ会えんじゃん。んな顔すんなよ」
「部活終わるの、待ってちゃダメ…?」
「ダメ。雨強くなる前に帰れ。すぐ暗くなるし」
しゅんとして俯く私に、
一平のこれみよがしな浅いため息が届く。
「そういうさ、ツンデレのデレの部分、うまく使って攻撃してくんのやめてくんない?俺、弱いんだけど」
「え!?」
「帰れよ、ちゃんと。またな」
一平の持つ独特の空気が消え、
薄暗い図書室に再び雨音が戻った。
「…帰るか」
寂しくひとりごちて、立ち上がる。
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