幸せひとひら

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私と一平は、中学の同級生だった。 三年間同じクラスの腐れ縁で、部活も同じバスケ部。 初めは顔を合わせればケンカばかりの犬猿の仲だったけれど、いつの間にか。 いつの間にか、私は一平を好きになっていた。 ケンカするほど仲が良いとよく言うけれど、 私たちは正にそれだった。 何だかんだいつも一緒。 友達と楽しいことする時も、ちょっと悪いことする時も、それで先生に怒られる時も。 いつだって中学時代の私の隣には、一平が居た。 バスケが好きで、音楽の趣味も似てて、マンガの貸し借りをして。 ケンカ友達の親友が、いつの間にか好きな人で、 だけど親友の関係を崩すのが怖くて、私は何も出来ないまま。 三年生になって進路の話が出ると、 私は真っ先に一平の進路を気にした。 でも。 一平の進路は、他の子たちよりも少し早く、決まっていた。 一平はバスケが好きなだけじゃなく、すごく上手かった。 それで、スポーツ推薦。 バスケの強豪校に、かなり早い段階から声を掛けられていたらしい。 その話を私は、何かの雑談の流れという感じで人伝に聞き、すごくショックを受けたのを覚えている。 何より一平から何も聞かされていなかったという事実が、図々しくも胸を締め付けた。 しかしそのままズルズル時間は流れ、夏が過ぎて秋になり、そして、秋も終わり。 受験シーズンの冬が近付けば近付くほど、 一平は私たち一般組に気を遣ってか、あまり連絡を取らなくなった。 その内学校へも行かなくて良い時期になり、受験本番を迎え、あっという間に卒業式だ。 いま思い出しても、私の中学三年間、 しょっぱいものだなと思う。
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