右側、青い街と赤い街。

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なら問題として、見ず知らずの中年がそんな事を言うのは何故だろうか。疑問が絶えない。 「すまない。訊かれたくないわな。それより、あんたの反応からやっぱり分かるのは此処に来たのはほんの少し前だろう?」 「……、一時間前に鯨っぽい飛行体から海に落ちて来たばかりで意味わかんねー、何だ此処は? 盲目を量産してーのかよ」 「はっはっはっ、鯨か、鯨ね。確かに。あれは鯨っぽい。ザトウクジラか?」 「シロナガスクジラじゃねーか、あれ」 「まあどうでも良い。あんた飛行船から落ちたのか、そりゃあ災難だな」 踵を返し、ゆったりと大通りを歩き始めた男性の背を追う。別に目立った目標もないのだから流されるのも悪くない。 「ああ、落ちた。正確には変な姉御肌な奴に殴られて落とされて一時間海を泳いで漸く此処に……思い出したらひでーな」 「確かに酷いなそれは。今回の外来者は性格が悪いのがいるのか……落とされたんなら、余り知らないんだろ?」 「あー、まあ」 曖昧に頷き、周囲の異常な青と赤の人々を瞳に入れては嘔吐感が込み上げる。しかして、どうやら耐性が付いて来たらしく、別に体質を使えば問題ないが、新鮮に影響を受けるのは悪い事じゃない。 態々使う必要がないのだが。 「なら、先ずはこの世界から説明するぞ? 此処は地球じゃない。この世界はストーリーって言ってな、驚きだが太陽の二倍の面積を誇るらしい」 「……にしては、俺の安っぽい空洞な身体に五倍の重力が掛かってねーんだけど」 惑星の大きさに比例して重力は増えるのだが、実感がない。 「博学だな。ただ此処は違うらしい。ストーリーでは来た者は例外なく来訪門から出てくる。私的にはその来訪門の通過時に身体が作り変わってるんだと思うぞ」 「へー」 来訪門、俺から練乳アイス括弧五十円括弧閉じを奪い、尚且つ放り出してくれたあれはそう言うのか。
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