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待てとか、色々言いたいのは山々だが、例えば鯨船と俺の中で定着した飛行船が、普通ならば飛んでいる事は出来ないのは頷ける事実。
あれは普通に墜落するのに浮いているのだから驚きだ。中が空洞でガスでも詰まっていたらまだ頷けるが、些か無理がある。
どうやら俺は、平行世界にいるようだ。嫌な思考とリンクして吐き捨てたいのは言わずもがな。
先を歩く男性は続けた。
「このストーリーは数々の平行世界の上に立つ、終着点だ。だからこそ文化もまた入り乱れてるぞ」
確定させるような口振りに細く息を空気に流す。此処の空気は酸素が含まれていたりするのか心配だが、生きているのだから含まれているのだろう。
しかし、男性の仮説を前提にすれば、この世界に身体を合わせられただけの可能性もある。些事な部分に目が行くのは仕方がないのだ。
性格としか言えない。それに全然とは行かずとも三割も信じてはいないのだ。そんなに簡単に平行世界の肯定何て出来る訳がない。
早く練乳アイスを食べたいし、家で寛ぎたくて項垂れたくて遣る方ないのだ。
「あんた、信じてないだろ?」
「あ? まあ、そりゃぁ勿論」
「はっはっはっ、信じるしか無くなる。かつておれもそうだったようにな。ああ、城には一人で行ってくれ。日本人位他にもいるしな」
足を止め、城からかなり離れた場所で対峙する。
顔を見上げなければならないのが癪に触るが、そんな事で憤慨する意味がないので流し、口を開く。
「一応訊くけどよ、何か注意事項とかねーか?」
「ああ、そうだな……夜の十二時から四時まで外を出歩かない事と、そのサングラスと服、赤なら赤、青なら青にしてないと面倒に巻き込まれるぞ」
「そりゃぁ親切にありがとーよ、おっさん」
サングラスを外し、畳んでジャージのポケットに押し込む。往来で行きなりジャージを脱ぐ訳にも行かないだろう。
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