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もしも、世界は複数あると確立したらどうなるか。平行世界の肯定は時間を超越する機会を得たも同然だと思う。
吐き気がして、口元を軽く左手で押さえた。視界に広がるのは無骨な金属製の床に這う薄い苔。空を一望し、燦々と太陽が輝き、辺りを明るく彩っている。
「なんだよこれは……?」
口にしたのは俺じゃない。
左に目玉を動かし、捉えれば――頭の螺が数本外れて脳髄に刺さってるんじゃないかと失笑してしまいそうになる――明らかに場違いな学生服の青年が辺りを見回し、人波に呑まれた。
目を前に戻し、何があったのかと騒ぐ時代が混ざりに混ざった眼前を舐めるように確認する。
侍姿の某や、中国の伝統衣装。更には無骨な甲冑、または紳士。年齢は問わず、世代も統率もないようで、見る限り、知り合いらしき者もいない。
時代錯誤も此処まで突っ切ると逆に清々しいが、頭が痛い。右手で洒落た赤いサングラスを掛け直し、その奥で鈍く渦巻く黒塗りの瞳で状況を再度確認した。
喧騒が騒音になり、百人近くの人間が植木が施された小さめの公園風の場所に集められている。日の暑さもさる事ながら、人間の暑さも相当に嫌悪出来るだろう。
真っ青なジャージ。首もとまで上げていたチャックを引き下ろし、鳩尾辺りまで開ける。微風が当たり、熱気が微妙に抜ける。
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