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背後に目を配れば、また一人、聳え立つ門から飛び出し、金属製の足元を転げ、俺の運動靴に頭突きした。
爪先が地味に痛い。興味はなく、扉を暗黙して観察する。俺も彼処から放り出されて今に至るのだが。
無差別に人間や、人間っぽくない奴まで一定時間置きに排出される様は十分前から見ていたので理解している。
無骨な金属が黒光りし、エレベーターの戸のような外見のそれは身長百六十㎝の俺の三倍はあるし、門の左右から伸びる灰色の導線やホースからは白煙が時折噴き上げていた。
前を一瞥し、祭壇らしき其処に立つ気前の良さそうな、要は騙され易そうな青年の赤と青の瞳を伺い。
次に簡単に切り揃えた赤と青に別れた髪に嘆息する。
「何てセンスのねー染め方だ」
洒落たサングラスを指で押し上げ、足元で踞る青年の目線に合わせるように膝を折った。
背中を二回軽く叩き、快活に笑って声を出す。
「なあ、お前さ、何か知らねーか? 俺も門から吐き出されて」
「――! ―――!」
「あ?」
何を喋っているのだろうか。全く分からない。中国語のようでいて伊語なまりが強いような、はっきり言えば使う言語が違う。
身を震わせ、肩を抱いて目尻に雫を蓄え後退する青年を見て、諦めた。
言葉が違うなら話しても意味がない。分かれば話すが、生憎分かっても面倒で意味がない。
どうせ放り出されて訳も分からず混乱している口だろうから、情報も望めないだろう。
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