右側、青い街と赤い街。

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「私は両端の国の王、レート・カルカッサ。皆よ、先に言う。皆を集めたのは私だ」 反発や罵倒が轟き、煩いと耳を塞ごうとすれば青年改めレート・カルカッサは叫び返す。 「静まれ! 説明が要らないのか!」 沈黙が落ち、舌打ちやほんの些細な敵意が場に定着した。 しかしながら、あんなに叫ぶと喉が痛くなる。心配だ。全く他人事だが。 「皆を呼んだのは他でもない。私に力を貸して欲しい。勿論、要求は出来る範囲で答えるし、詳しい説明もする――ようこそ、我らの世界、ストーリーへ」 柔らかく笑う。納得した者もいるが、先ずは詳しく話を聞こうとする者が大半を占めている。 だからと言って、俺は納得は出来ない。中学三年の人間で、帰宅部の部活帰り、夏場だからアイスを買って食べようとした時。 穴に落ちたような感覚の後に放り出された場所で結局練乳アイス五十円は手にはなかった。 さて、こんな事で怒るのも癪だが、信頼や信用は要らない。
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