右側、青い街と赤い街。

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早く水分をくれないだろうか。 何て愚考していると肩を叩かれた。右肩だ。だから左を向く。 「なんつーか、刃物は駄目だ。だろ?」 背後の者に言って、前で構えていた青年は刃物を腰のストックに潔く仕舞った。まるで、此方の実力を推し測るような態度に不満だ。 右に顔を戻し、赤いシャープなサングラス越しに相手を眺める。 「……」 俺から見て左側の髪を緑の髪留めで纏め、前髪は睫毛に掛かるように楽に流したショートヘアーな女性はこの暑さだと嫌になるだろうミリタリーボトムズを履きこなしていた。 鋭い目とぶつかる。琥珀の瞳。鋭利に笑う唇。 「なあ、餓鬼。一緒に脱出しねぇか?」 身長は百八十㎝はあるだろうか。そんな姉さんのような人を見上げれば、一興だと目すらもが微笑していた。 「……しねーとか、そんな話じゃねーよ。つーか、誰だ?」 「ああ、ワタシか? 聞かれたら仕方がない。ワタシはって、名乗る訳がねぇだろ、餓鬼。良いから付いてこいって、おもしれーから」 悪友。あれはこんな感じに健全な友人を悪に染めるのだろう。首にその腕を回し、華奢そうに見えて筋肉が絞り込まれた女性に引き寄せられる。 右の顔面が肉厚で柔らかいそれに沈むが、懐を晒し、余裕を醸しているのに強そうだと認識させられた。要するにだ。 全然興味がない訳じゃないが、別に興味の意味がない。だから保留問題だ。 「離せって。ほら、他の奴らレート・カルカッサ? とか言う奴の案内でどっかに行ってるじゃねーか」 「良いから良いから。彼奴は信用ならねぇ」 「あ? 何の根拠があるんだっつーの」 「勘だ、勘にしては冴え渡り過ぎて、ワタシはこれを直感って呼んでる」 腕の拘束を外し、サングラスを直して辺りを伺う。
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