右側、青い街と赤い街。

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数十名の者が此方を見据え、分からない言葉で会話を繰り出している。 女性に向き直り、改めて容姿を網膜に焼き付けた。忘れない為にしている。心のブラックリストに登録せねばならない。 微風に靡くショートヘアーの白髪。 チューブトップに胸のそれを押さえ付け、晒されている腰回りは括れが出来ていて、臍の周囲に禍々しい入れ墨が刻まれていた。 「センスがねー……」 「餓鬼、殴ってやる」 「決定事項とかふざけんじゃねーよ」 拳を握り締めた女性から目を流す。 襟を握られ、首が絞まった。 後ろ首を掴まれて引き摺られ、一応抵抗するが意味をなさず、適当に放られる。腹に食い込む塀のような外壁。 腰たけ程の其処に連れられた俺は下を見て、サングラスを右手で押さえる。落とさない為に。 「一面の海、高度は約一㎞っつーか、何と言うか……」 圧巻ではある。更に、これが飛んでいると言う事も知り得た。だからこそ鼠算で疑問が増えて行く。 霞む海上、吹き上げる風。落ちたら酷く危ないだろう。澄み切った海は日本の海とは到底思得ない。
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