右側、青い街と赤い街。

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濡れ衣を絞る。濡れ衣を着てしまう。あれは多分自身の性ではないのに水の中に叩き落とされた人の言葉だ。 知らないのだが、ジャージを絞り、乾燥したら塩が付いてしまうとサングラスを掛け直した。 海岸から上がってから丘を登る。 海水が服の端から零れ、まるで足跡のように草原に身を潜ませて行く。髪から滴る塩辛い水滴に苛立ちつつも諦めていた。 肉体労働は好きではないと言うのに一時間程海を泳ぎ、挙げ句ポケットの中にあった財布や携帯電話はなくなっている。 「さながら、親に勘当され放り出されたみてーだ」 経験はないのだけれども。言わずしていられないし、少し背伸びしたような丘を登り切った所で数秒思考を廃した。 数秒後復旧し、眼下に広がる光景に目を瞬かせ、サングラスの縁を右手で摘まみ上げる。 サングラスの性かも知れないと思ったが、結果は変わらず、疲れているのか目玉がお逝かれになったらしい。 眼科に行こう。だが、辺りにはない。諦め、サングラスを戻して冷たい海風が背後から吹き抜ける丘の頂上で膝を折った。 顔を草に向け、初々しい緑に口角を弛め、苦そうな深緑に笑窪を作る。 「……草って和むなー」 爽やかな風にしなやかにしなり、ゆるりと戻る姿に一分見入って、現実逃避を諦めた。
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