サイレント・ラブ

3/55
前へ
/55ページ
次へ
「――そろそろ戻らねば……」 まだ暗い窓の外。 空の月を見つめ、名残惜しそうに呟くその横顔を、わたしはただ、じっと見つめる。 「今日の昼、本邸に戻るんだ。来月は、月の終わりにパーティーを開くとかで、慌ただしくなりそうだから、次にこっちに来るのは、再来月になると思う」 そう言って、こっちに顔を戻した彼は、こくりと頷くわたしを見て、寂しそうに微笑んだ。 「……すまない、リアナ。必ず君を妻に迎える。それまでは寂しい思いをさせてしまうが、誰のものにもならず、待っていてほしい」 申し訳なさそうな彼の言葉に、わたしは笑顔で頷く。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加