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彼の名は、クリストファー・ローウェン・ハミルトン。
この辺り一帯を治めるハミルトン伯爵と、第1夫人のご子息。
つまり、伯爵家の跡継ぎなのだ。
一方のわたし、リアナ・カーヴィは、その日の生活もやっとな貧しい農家の娘。
そのうえ、六歳のとき強盗に入られ、目の前で両親を惨殺されたショックで、言葉まで失ってしまった。
――精神的なものだから、いつか取り戻せるだろう。
そう医者に言われたが、この声は未だ失われたまま。
口もきけない娘など、農家ですら貰ってはくれない。
そんなわたしとクリス様の恋を、いったい誰が認めてくれるというのだろう。
わたしたちは、住む世界が違いすぎるのだ――。
それをわかっていて、それでもクリス様の言葉に頷くのは、僅かでも夢を見たいから。
刹那でいい。
砂粒ほどの光でいい。
ただ、幸せな夢が見たいのだ――。
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