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同じ様な崖が幾つか連なっていて、一際大きく前に突き出した崖があり、下から何とも凄い形相の人が登って来る。
高さ300m以上はある足場何て無い崖を人間が登ってこれるのか……
ゆっくりと一歩又一歩近付いて来る、関節が変な方向に曲がっている。
謎の人間が見つめる先に、楽しそうにはしゃぐカップルがいた。
《危ないって!!すぐ側まで来てるんだってば!!》
声が出ず口をぱくぱくさせる、そんな私をニヤッと卑しく笑う。
男性の足首に手を伸ばす。
ガクッと足を掬われ尻餅を付く。慌てて女性が彼の腕を掴み止めた。
男性は引きつった顔をして、女性は安堵の表情を浮かべた。
そのすぐ下で、口惜しそうに顔を歪め、カップルをいつまでも睨む謎の人物がいた。
諦めたのかゆっくり海に帰って行く。次に連れて帰れる人間が来るのを、暗く冷たい海の底で待っているのだろうか――
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