ヒトリノ夜

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(…………さて、明日からどうするかなー……) 真っ暗な部屋で天井を見上げながら、柚子は大きく溜息をついた。 立つ鳥後を濁さずとばかりに徹底的に掃除をし、食材を無駄に余らせることもないと夢中で料理をしていたら、いつの間にか日が沈んでしまっていた。 慌てて前に住んでいたアパートに帰ってきたものの、電気もガスの連絡も忘れていて、部屋の中は真っ暗だった。 水道のみ大屋の管理で、トイレだけは使えるのがせめてもの救いである。 (昨日は高級旅館でご馳走食べて、のんびり温泉に浸かってたのになー…) 今は電気も点かないボロアパートで、暗闇に脅えながら古い畳の上に一人ぼっちで座り込んでいる。 余りの落差に思わず笑いが込み上げてきた。 (明日はとにかく朝から電気屋とガス屋に連絡して……バイト探さないとなー) これからの生活費、学費、全て自分で稼がなくてはならない。 こうして家を追い出されても、帰る家があるだけ自分はまだ恵まれている。 (…………証………) 昨日、箱根で証に買ってもらったフォトフレームを手にしながら、柚子は証のことを思った。 昨日は突然のことに証を激しく憎んだが、証が自分にしてくれたことを思うと、その気持ちもいつしか薄らいでいった。  
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