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「本社での証の様子は……どうなんだ?」
「え?」
「その……元気でやってるのか? 引き継ぎがあるっていうのに、こっちにはあまり顔を見せないから……」
「……ああ」
すぐに東野は笑顔になった。
「さすが証様だよ。言われた仕事はテキパキこなしてるし、会長も満足そうだ」
「…………そう、か」
「………ただ……」
東野の顔がふと曇る。
五十嵐は目を上げて、東野の顔に見入った。
「………ただ?」
「何ていうか……覇気がないというのか……証様独特の、ギラギラしたところがないというか…。仕事はテキパキしてるんだけど、ただ淡々とこなしているだけというか……」
「……………」
やはり昔から証を見てきただけあって、微妙な証の変化には気付いているようだ。
五十嵐はここぞとばかりに身を乗り出した。
「東野、教えてくれないか」
「………な、なんだよ」
突然、五十嵐が切羽詰まったような声を出したので、東野はわずかに警戒するように身を反らした。
「証が本社に戻ることになった経緯を、知っているなら教えてほしいんだ」
「……………え」
東野は驚いたように五十嵐の顔を見つめた。
「お前……証様から何も聞いていないのか?」
「ああ。納得いく答はもらえなかった。だからずっと、先のことも考えられずにモヤモヤしてるんだ」
「……………」
「頼む。ここだけの話にするから、教えてくれ」
そう言って頭を下げた五十嵐を、東野は戸惑ったように見つめていた。
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