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『今日の晩御飯、洋食か和食かで悩んでます。どちらがいいですか?』
柚子からメールが入ったのは、昼を過ぎて少し経った頃だった。
おそらく昼休みのこの時間帯を選んでメールしてきたのだろう。
五十嵐はふっと口元をほころばせた。
ひどい自己嫌悪に陥った昨日から一夜明けて──。
五十嵐は気持ちを切り替えることに決めた。
何が一番大切なことかと考えて、それはやはり柚子を守りたいということだった。
これ以上柚子を苦しませたくない、哀しませたくない……。
立場は違えど、証も五十嵐もそう思うことに違いはないはずだった。
五十嵐は少し考えながらメールの返事を打つ。
『和食希望です』
するとすぐに柚子から返信があった。
『了解です。あと、私の家はまだ何かと不揃いなので、五十嵐さんの家で作らせてもらっていいですか』
その文面を見て、電話したほうが早いなと思った五十嵐は、画面を切り換えて柚子の携帯番号をプッシュした。
柚子はすぐに電話に出る。
『もしもし』
「もしもし、柚子さんですか?」
『は、はい。あの…すみません、お仕事中に…』
「いや、今は昼休みですよ」
言いながら五十嵐は吸いかけの煙草を灰皿に置いた。
「直接話したほうが早いかな、と思って」
『そうですよね』
電話の向こうで少し笑った柚子の声を聞き、五十嵐の胸がかすかに痛んだ。
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