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机に並べられた料理を見て、五十嵐は本気で感動した。
一目見て、柚子がかなり腕を振るったのだとわかる。
「すごい。これ全部柚子さんが作ったんですか?」
「あ、惣菜屋で買ってきたって疑ってるんですか?」
「いや、そうじゃないですけど、なんかすごすぎて……」
「大袈裟ですよ。……早く食べましょ」
あまりに手放しで褒められ、柚子は照れながら席についた。
同時に手を合わせ、いただきますと言って食べ始める。
「炊き込みご飯なんて家で作れるんですね」
「そりゃ、作れますよ」
「いや、俺の母親ってお嬢様育ちで東京出るまで料理なんかしなかったから、結構ひどかったですよ」
五十嵐はクスクス笑いながら言った。
柚子は箸をくわえ、チラッと五十嵐に目を向ける。
「か、彼女さん…は。料理、上手だったんですか?」
「…………え」
五十嵐は驚いて柚子を見つめた。
目が合うと、柚子は少し赤面してサッと俯いた。
「………んー。まあまあ、かな。カレーとかオムライスとかが多かったので」
「………そ、そうですか」
相槌を打ちながら、柚子は再び箸を動かし始めた。
(………変なの。前は彼女のことなんて、気にならなかったのに……)
今は少し、五十嵐の過去の恋愛が気になる。
昔、五十嵐が好きになった女性がどんな人だったのか……。
赤い顔の柚子を見て、五十嵐はそっと笑みを浮かべた。
(少しは、妬いてくれたりしてんのかな)
そう思うと素直に嬉しく、五十嵐の箸もいつも以上に進むのだった。
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