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食後、柚子が洗い物をしていると、五十嵐が気遣うように背後から声をかけてきた。
「手伝いましょうか?」
「いえ、もう終わるし大丈夫ですよ」
「……そうですか。じゃあコーヒー淹れますね」
「あ、すみません」
なんだかこんな風に気遣われることに慣れていないので、落ち着かない。
どっしりと構えていてくれればいいのだが、五十嵐の性格上そうもいかないのだろう。
急いで洗い物を済ませ、柚子はリビングへと戻った。
「コーヒーいただきます」
「あ、はい。どうぞ」
コタツに潜り込んだ柚子は、熱いコーヒーに口を付けてホッと一息ついた。
(なんか温かくてほっこりして、落ち着くなー。……帰りたくなくなっちゃう)
どうせ家に帰っても一人ぼっち。
寒いうえに、淋しいというか、侘しいというか……。
「バイトはもう探してるんですか?」
不意に声をかけられ、柚子はハッと顔を上げた。
目が合うと、五十嵐は首を傾げて微笑む。
「あ、えーと。まだ何も……」
「そうですか。どんな仕事を探してるんですか?」
「やっぱり学生なんで、時間の融通きくとこですかね。考えてるのはコンビニ…とか」
「コンビニか。そこのコンビニだったら、毎日通おうかな」
五十嵐は冗談ぽくそう言った。
柚子は笑顔を返したが、すぐにそれを収める。
先程からそうなのだが、ふとした瞬間に五十嵐が少し物憂い表情をするのだ。
だがそれも一瞬で、すぐにいつもの五十嵐に戻るのだが……。
(疲れてるの…かな)
柚子はコーヒーを啜りながら、じっと五十嵐の横顔に見入った。
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