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「……すみません。お忙しいのに私、気を遣わせてしまって……」
「いや、違います。気なんか遣ってないですよ」
五十嵐は慌てて手を振る。
「俺が柚子さんに会いたかったんです。柚子さんに会って、癒されたかったんです」
「……………」
「それにあんなに頑張ってご飯作ってくれて、すごく嬉しくて…本当に元気付けられましたから」
五十嵐は柚子の頬にそっと触れた。
「………甘えてしまってるんです、柚子さんに。男で、ずっと年上なのに情けないな」
「…………そんなこと!」
柚子は思わず、自分の頬に置かれている五十嵐の手をぎゅっと握りしめた。
「男の人だろうが年上だろうが、たまには甘えていいと思います! 私なんかいつもいつも五十嵐さんに甘えてるし……」
「……………」
「わ、私で五十嵐さんの力になれるなら、何でもします」
熱い言葉に、五十嵐は胸を衝かれる。
柚子が本当に心からそう思ってくれていることが、伝わってきた。
愛しくて、五十嵐は親指で柚子の頬を撫でる。
傷付けたくなくて、嫌われたくなくて。
抑え込んでいた欲望が、こうして触れたことで首をもたげてくる。
真摯な瞳にじっと見つめられ、理性が利かなくなる。
空調の音が、五十嵐の高鳴った鼓動を静かに掻き消してくれた。
柚子の頬を撫でていた手を止め、五十嵐は目線を下げて柚子の瞳を覗き込んだ。
「キスして、いいですか」
囁くようにそう言うと、触れた場所からサッと柚子の緊張が伝わってきた。
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