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五十嵐のその笑顔を見て、何故か柚子の胸に熱いものが込み上げてきた。
「……………っ」
再び涙が浮かんできそうになり、柚子は唇を噛み締めて俯いた。
五十嵐はじっと柚子を見つめる。
明らかに頬には泣いた跡があった。
「どうしたんですか、電気も点けないで」
五十嵐はわざと明るい声を出す。
柚子は涙を堪え、俯いたまま口を開いた。
「その……帰ってきたのが遅くて、電気屋にもガス屋にも連絡できなくて……」
「…………えっ!?」
五十嵐はぎょっとして柚子を見下ろした。
ただ単に、泣いているうちに暗くなり、電気を点けるのも忘れていたのだと思っていた。
五十嵐は柚子の両肩を掴む。
「もしかして、一晩ここで過ごすつもりだったんですか!?」
「だって……ここしか帰る場所はないから……」
柚子の言葉に、五十嵐はカッとなる。
「何故、すぐに俺に連絡してくれなかったんですか!」
「……………!」
柚子は驚いて五十嵐の顔を見上げた。
その時、柚子の家の隣のドアが開けられ隣人が顔を覗かせた。
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