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五十嵐はわずかに驚いたように目を丸くした。
柚子は唇を噛み締め、五十嵐の反応を窺う。
(い、言っちゃった……)
恥ずかしくて、顔が熱くほてりだした。
だが意外にも、五十嵐は笑ってあっさりと頷いた。
「いいですよ」
その軽い口ぶりに、柚子の緊張が一気に緩む。
(……え、あ、あれ……?)
「寒いし、今から帰るのは億劫ですもんね。明日は日曜だから朝はゆっくりできるし」
「…………あ、あの」
「あ、じゃあ、すぐに風呂沸かしてきますね」
そう言うと五十嵐はサッと立ち上がった。
そのまま浴室へ向かう五十嵐の背中を、柚子は呆然と見送る。
(………もしかして…全然、伝わってない……?)
一大決心の申し出。
だが、五十嵐にその奥の意味までは伝わらなかったらしい。
(嘘でしょ~! こんな恥ずかしい思いするの一回で充分だよっ!)
柚子はコタツ布団に顔を突っ伏す。
そうして、今まで自分がしてきた数々の無神経な行動を改めて悔やんだ。
(私がずっと五十嵐さんの前で無防備なとこばっか見せてるから……肝心な時に気付いて貰えなくて当然か……)
警戒心がなさすぎると忠告されながら、それでも一緒にいてほしいと言ったり。
五十嵐の想いを知ってからも、淋しさに勝てずに言われるままについてきたり。
………きっと今日もその延長線上で、ただ単に泊まっていくだけだと思っているのだろう。
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