狡い選択

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そうこうするうちに五十嵐が浴室から戻ってきた。 「お湯溜まりましたから。今日は柚子さん先に入ってください」 「…………あ」 柚子は慌てて顔を上げる。 五十嵐はそのままクローゼットに進んだ。 「パジャマ、前と同じのでいいですか」 「…………はい」 柚子は頷きながら、コタツから出た。 五十嵐はパジャマを取り出し、柚子に差し出す。 「どうぞ」 「………あ、ありがとうございます」 柚子がパジャマを受け取ると、五十嵐は続けて自身が使う布団に手をかけた。 柚子はハッとして思わず五十嵐の腕を掴んでいた。 「ま、待ってください、五十嵐さん!」 「え?」 「そ、その布団、出さなくていいです」 柚子の言葉の意味がわからないのか、五十嵐は戸惑ったように柚子の顔を見下ろした。 柚子はゴクリと息を飲む。 「………ベッドで、一緒に……寝ましょう……」 そこで五十嵐は大きく目を見開いた。 柚子の胸がこれ以上はないというほど早鐘を打ち出す。 五十嵐は動揺したように瞳を泳がせた。 「………え、えっと……どういう……」 「ほ、本当はもっと早く言いたかったんですけど……」 柚子はゆっくりと五十嵐の顔を見上げた。 「私……五十嵐さんと、お付き合いします」 「……………!」 五十嵐がハッと息を飲むのがわかった。 柚子は五十嵐の腕を掴んでいた手を離し、小さく頭を下げた。 「………今夜、私の初体験、貰ってください」  
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