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土曜日の夕方、証は自宅のソファーにぐったりともたれかかっていた。
怒涛のような一週間が過ぎ……。
今日の午前中、久々に自分の会社を訪れた。
土曜日なのに、会社には何故か五十嵐の姿があった。
証の姿を見て五十嵐も驚いたようだったが、もう何も尋ねてはこなかった。
………柚子のことは、お互い一言も口にせず。
仕事の話だけを淡々と交わし、昼過ぎに五十嵐は会社を後にした。
その後、一人で黙々と仕事をこなし……。
夕方に帰宅した時には、精も根も尽き果てていた。
証はボーッと天井を見上げる。
(………飯、どうすっかなー…)
柚子が作り置きしてくれていたおかずも、とうに食べ尽くしていた。
手作りの家庭料理にすっかり慣れてしまっていた舌に、外食の何と味気ないことか。
(………マジで掃除だけじゃなく、飯作ってくれるハウスキーパー雇うか……)
まず食べなければ体が持たない。
証は起き上がり、ノロノロとマガジンラックに手を伸ばした。
「……………!」
ハウスキーパーの連絡先を探していた証の目に、意外な物が飛び込んできた。
慌ててそれを手に取る。
それは柚子がピアノの練習で使っていた楽譜だった。
(………忘れて行ったのか……)
証はパラパラとそれをめくる。
細かく書き込まれた柚子の字を見て、証の胸が締め付けられた。
(──── 陸に預けるか……)
そう思い、楽譜を閉じたものの……。
今、連絡をすれば柚子に会えるという思いに、証は抗えなかった。
………気が付くと携帯を手にし、消去できなかった柚子の携帯番号に、電話をかけてしまっていた。
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